「ジャパニメーション」はなぜ敗れるか (角川oneテーマ21)



「ジャパニメーション」はなぜ敗れるか (角川oneテーマ21)
「ジャパニメーション」はなぜ敗れるか (角川oneテーマ21)

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第二部は説得的

 1958年生まれの戦後民主主義に肯定的なまんが原作者・編集者・評論家と、1976年生まれの左翼的評論家が(両者の役割分担については287頁参照)、「まんが/アニメーションにとっては決してプラスになるとは思えない」ジャパニメーション国策化の動きの無効・無根拠性を徹底批判するために、2005年に刊行した本(みなもと太郎も関与)。第一部は日本の漫画・アニメ史のイデオロギー批判的な回顧であり、1)現在の日本の漫画・アニメがディズニー・ハリウッドの二次制作として始まり、その結果美術から自立して記号的・無国籍的なキャラクターを生み出したこと(これが普及の原因であるとされる)、2)戦時下の要請により、科学的な兵器リアリズムと透視図法的な映像的手法を駆使し、記号的な不死の身体性を持つ主人公を使い、鳥瞰的に物語を構成するという、戦後漫画の基本形ができたこと、3)戦後に手塚治虫が記号的なキャラクターを受肉させ、内面を持たせた上で、倫理的に暴力性を抑止したが、70年代以降徐々にこの抑止が解除されていったことが述べられる。著者はこの3点を踏まえて現在の国策化に警鐘を鳴らすが、言わんとするところは分かるけれども、正直言って批判としては抽象的すぎる感が否めない。他方、第二部は国策化推進派のレポートの分析であり、内外の漫画・アニメ市場の狭さ、配給ルートを支配するハリウッドの圧倒的な経済的な強さ、オタク市場の「国辱的」要素の強さと収益性算定の困難さ、アニメーター養成プログラムの問題性等が指摘され、漫画・アニメが現在十分自律的にやっていける以上、対米追随と利権のための国策化は拒否する、という結論が導かれる。この第二部は説得的に思える。総じて、第一部と第二部のつながりが希薄であるように思えるが、興味深い本ではあった。

正論は通じるか!?

中国にパクられたらマジギレするくせに、ハリウッドにパクられたらデレデレと喜ぶ。
そんな日本の風潮の不整合を容認する為政者に対する、不快感を表明した本です。

さて、不整合性を指摘する言葉には、
「中国にマジギレするならハリウッドにもマジギレするべきだ」
「ハリウッドを容認するなら中国も容認するべきだ」
の2つがあり得ますが、
本書は、
「クリエーターとしては、中国にパクられてもハリウッドにパクられてもデレデレと喜びたい気持ちになる」
「業界人としては、中国に正当な対価を払わせても金銭的メリットはまるでなく、ハリウッドにこそ対価を払わせるべき」
というような論調になっています。金銭面での裏付けは、あまり見慣れない論調で新鮮な驚きがあります。

しかし今の日本の世論は、臆面もなく「格下にナメられたからキレてるんだ、何が悪い」と言わんばかりなので、もうひとつ言葉が必要だったと思います。
一部二部を分冊してもよかったかも

読む人の興味しだいで感心する部分とまったくいらない部分が分かれる本。
個人的には所詮は娯楽である以上、漫画やアニメをあまり無闇に哲学的に
捉えるのは娯楽の躍動感を無視した頭でっかちな考えに過ぎると
思うので、第一部は無味乾燥な内容でしかなかったが、第二部はこの業界の
経営体制の貧弱さに対する憤慨がこめられていてなかなか読ませてもらった。
結構すでに俎上に挙がっている話しだとは思うが、一般論壇でアニメ業界
のさまざまな意味での貧しさを正面から説いたのは評価に値すると思う。
アニメ業界が夢がある業界になるのはまだまだ先か、それともすでに終焉が
来ているのか。思想よりもまずは安定したメシから始めましょうよ、と
単純に言ってくれれば話は簡単にまとまるのだけど、第一部でアウトローな
左派思考を展開しているので、みずから自説の着地点を難しくしている
ところが難点か。


言葉が背後に担うもの

最後のページで著者は次のように言い切る。
「戦後のまんが/アニメ史は、戦争という経験の中で達成された倫理を
 内包しています。それは、ぼくたちの表現が唯一、ハリウッドから
 自立しえた部分です。」
この文章に対して「自明である。全くその通りである。」と私は思うのだけれど、生理的に受けつけない人も多いのだろうな。自身が「あたりまえ」と思うことが、他者にとっては「サヨク」と見なされるのは、貴重な体験である。自分が「論証の必要などない、人情の自然」のように
感じることが、多くの他者から「イデオロギッシュなクリシェ」と取られる場面で、「そうか、どうしたら他者に通じる言葉を提示できるか、
鍛錬を続けなければいけないんだ」と気づかされる。
このような副次的な効果も持つ、おもしろい本です。
業界批判は重要

アニメーションの国策化は早晩に失敗するという意見には大筋で賛成でした。

意見の客観性については、判断の難しいところですが、
そもそもアニメーション業界は、業界批判をする媒体がないと言う致命的な欠陥を持っている業界であると思っています。
アニメージュから日経Charactersまで、アニメ雑誌は他業界のメディアと違って、
「アニメが当たって欲しい、売れる作品が出て欲しい」と言う姿勢で、
制作会社からの情報をサブリミナルしているだけという状況は、一業界として余り健全とは言えないと思っていました。

業界に対してちゃんと問題点を指摘出来るような媒体が、存在しなければ、いつまで経っても、アニメーターの給与体系の改善など、
収益改善のためのビジネスモデルの構築など、長年叫ばれていた問題を解決するための業界再編が行われず、
業界自体が消滅してしまうと言う最悪の事態を避けれらないのでは?と思います。

こうした正論は、まず発言することが最も重要だと思うので、そう言った意味で、星は4つです。

結果として、「産業政策について、経済産業省が後押して成功した産業はない」という根強い意見に、
新たな正当性を与えるであろうことは十中八九間違いないと思いますが、
それとは別に、省庁に良いようにされた後に、業界が停滞するという著者の予想する結末よりは、
省庁を踏み台にしてステップアップするようなしたたかさを業界には、希望します。



角川書店
物語消滅論―キャラクター化する「私」、イデオロギー化する「物語」 (角川oneテーマ21)
教養としての〈まんが・アニメ〉 講談社現代新書
アニメーション学入門 (平凡社新書)
サブカルチャー文学論 (朝日文庫)
日本のアニメ全史―世界を制した日本アニメの奇跡




渋谷のドン

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